ガイア最新話感想

第38話

大地裂く牙

放映日

1999年5月29日

登場怪獣

地殻怪地底獣 ティグリス


脚本

古怒田 健志

監督

原田 昌樹

特技監督

原田 昌樹


ストーリー

作成

くらむぼん


エリアルベースに、一人の男が部下を引き連れやって来た。白いGUARD士官服に身を包み、サングラス
をしたその男は、コマンドルームに入って来た。
「GUARD環太平洋部隊の柊です。」
彼に向かって、石室コマンダーは敬礼し迎えた。
「XIGコマンダー、石室です。」
「久しぶりだなぁ、柊君。」千葉参謀が親しげに挨拶を交わした。
「噂には聞いてましたが、素晴らしい基地です。ここが空の上だとは、まだ信じられません。」
柊が千葉に応える。
「早速だが、用件を聞こうか。」千葉は、柊の突然の来訪に、何かしら重大なことを感じている。
サングラスを外した柊は、直立不動のまま語りだした。“明後日、津村湖の地下1500mに眠る怪獣
(コードネーム:ティグリス)に対し、地底貫通弾による攻撃を実施する”と。
その言葉を聞き、こころよく思わない表情の千葉参謀が言う。
「地底貫通弾は、かつて国際条約で戦争での使用を禁止されていた大量破壊兵器だ。
 たとえ怪獣相手に使うとしても、それを使うことは私は好まない。」
「千葉参謀、怪獣はいつ目覚めるか分かりません。
 地底貫通弾は、地下にいる怪獣に致命傷を与える、唯一の兵器です。」
「しかし、環境汚染や、地殻破壊などの悪影響も報告されている。」
「環境が守られても、そこに住む人間が“安全”でなくては、意味が無い。」
千葉の目を真っ向から見据え、一歩も退く意思のない柊。
「これは決定事項です。XIGには、万が一の時に備えて、バックアップをお願いしたい。」

休暇を取っていた敦子は、姉の見舞いのため地上へ降りていた。同じく我夢も、無理矢理に梶尾を
連れて、下手な運転で律子の入院している、津村町の病院へと向かっていた。病室の前で躊躇する
梶尾に、我夢はわざと部屋をノックしたまま去ってしまった。梶尾は仕方なく入っていくと、そこ
には、ベッドの上で髪を梳かしている律子が居た。梶尾の姿を見て、慌てて片づける律子。もうだいぶ
快復しているようだ。
外へ出た我夢は、ベンチに腰掛けている敦子を見つけた。敦子は梶尾と律子を二人にする為に気を
利かせたのだった。以前、敦子が梶尾に恋心を抱いていたことを知る我夢は、「いいの?」と聞き返す
が、敦子は、「自分自身で決めたことだから・・・」と、さっぱりしているようだ。そんな敦子が明るく
言った。
「ねぇ我夢、見てぇ、この晴れ渡った空を〜。まるで私の心のようだわぁ〜!」
「曇って、、、きたみたいだよ。。。」と我夢。
その言葉に「ハァ〜」と溜め息し、うな垂れる敦子と、バツの悪そうな我夢。。。
外へ出て散歩する二人を見つけた敦子は、慌てて物陰に隠れた。我夢もつられて隠れる。顔を並べ
寄せ合い、こっそりと見る二人だが・・・
「なんで私たちが隠れなきゃいけないの〜!?・・・我夢!」と、敦子は言いながら、、、
まだ、ボーっと見つめる我夢の頭を叩いた。(-_-メ バシッ!!! (+_+?

エリアルベースのコマンドルームでは、石室と向かい合った千葉が問いかける。
「コマンダー、柊君をどう思う。」
「意志の強い男ですね。」千葉の問いかけに、石室はそう答えた。
千葉は石室に、柊が以前、アリゾナでのゾンネルとの戦いで、指揮を執っていたGUARDアメリカ地上
部隊を、全滅させられてしまったことを語った。
「自分の部隊を失った辛さはわかるが・・・」千葉が苦々しく言う。
エリアルベースの廊下では、窓の外に映る夕焼け空を見つめながら、柊が言った。
「美しい景色だ。こんな所に居るから、地上の人間の痛みがわからなくなる。」

〜翌日〜
津村湖畔に、我夢が立っていた。
「何をしたわけでもない。地底に眠っているだけの怪獣にミサイルを撃ち込む・・・そんなことが//」
「許される筈がない。」いつの間にか、我夢の側に藤宮が居た。
「藤宮!」
「地底に眠っていた怪獣たちを呼び起こし、結果的に、地底貫通弾を使わせたのは、俺だ・・・」
「しかし、それは・・・」
「そうしていなければ、たくさんの人間が死んでいた。俺は救われたと思っていた。
 だが今は違う。地球に向けた刃は、いつか必ず、人間自身にはね返る。」
「そうかもしれない・・・」
「俺は腕ずくでも、地底貫通弾の発射を止める。」
「藤宮・・・」
「俺は、俺のやり方でやる。お前は、自分に出来ることを考えろ。」

エリアルベースでは、石室コマンダーが、柊に、地底貫通弾の実行を思い止まるよう進言していた。
しかし、柊の心は変わらない。

我夢は、湖畔にたたずみ、地形と方角から風水を見ていた黒田恵と出会う。互いに自己紹介する
二人だが、恵は何気なく言った。
「あの、一度、お会いしたことがありませんか?」
実は、以前、都心に現れたミズノエノリュウを大地に返してやった時、ガイアとなった我夢は、恵と
目を合わせたことがあったのだ。ふと、その時のことを思い出したが、我夢は平静を装って言った。
「あ、、、気のせいだと思います。」
“風水によると、地底に眠る怪獣は、大地の膨大なエネルギーに守られている”と、恵は言う。
ミサイルに、どれだけの効果があるのか疑問だとも・・・

柊は部下を引き連れ、地底貫通弾の発射準備に現地へ到着した。陰から、彼らをじっと見つめる藤宮
の姿がそこにあった。
我夢は、恵の言う“地底貫通弾が効かないかもしれない”ことを、エリアルベースへ通知した。
石室コマンダーは、避難指定地域を津村町全域に拡大させる。GUARDに属するXIGコマンダーとして、
それが今出来る精一杯のことだった。恵も、KCBテレビ局の倫文に、津村町の避難を呼び掛けるよう
電話をした。乗り気の倫文に対し、何の裏付けもない情報に、恵をよく知る田端や、玲子も反対する中、
“GUARD広報から、津村町全域に緊急避難勧告が出された”との情報が入った。
津村町の病院に入院していた律子は、他の患者たちと一緒に避難をしている。
津村町の警戒にあたる為、エリアルベースから、チームライトニングが飛び立った。

恵が我夢に語る。
「高山さん、以前、ミズノエノリュウが東京に現れた時、どうされてました?」
「・・・“現地”に居ました。」
「ミズノエノリュウは、人間が作った街を見ていました。おそらく、私たちにやり直すチャンスを
 くれたんだと思うんです。人間さえ、その気になれば・・・。
 でも、今、人間は、自らそのチャンスを、投げ出そうとしているのかもしれません。」
我夢は、恵をファイターEXに乗せ、人工知能PALに異常振動を検知したら緊急離陸するよう命じた。
そして、地底貫通弾の管制塔へと向かった。

地底貫通弾の発射管制塔に入った柊は、マイクに向かって呼び掛ける。
「予定通り5分後に、地底貫通弾を発射する。総員、配置につけ。」
次々と警戒する部下たちを電気ショックで倒した藤宮が、柊のいる管制室へ入って来た。
「あなたが作戦の責任者か。」
「柊。君は確か//」振り返り、サングラス越しに鋭い眼光を向ける柊。
「藤宮博也」その柊の言葉を遮り、自ら名乗りをあげる藤宮。
柊は、サングラスを外し、藤宮を見据えた。その柊に藤宮が警告する。
「これ以上、地球に傷を負わすな。こんなことを繰り返しているうちに、世界は滅ぶ。」
「テロリストに指図される覚えはない。」
「自分達だけが生き残る為に、他のものを滅ぼすことは、人間の驕りだ!」
「私はたくさんの人達が、怪獣の犠牲になって、空しく死んでいくのを見てきた。
 怪獣は、滅ぼさなくてはいけない!」
どこか哀しげにそう言うと、柊は地底貫通弾の発射ボタンに手をかけた。
「その装置から手を放せ!」
飛び掛かって阻止しようとする藤宮の腹に、柊の拳の一撃が食い込んだ。崩れるように倒れる藤宮。
「すでにたくさんの人達が、怪獣によって命を失ってるんだ。
 その人達に対して、お前はどう責任をとる!
 私は、これ以上の犠牲は出させない。人類の為に・・・」
遂に、発射ボタンが押された。地底貫通弾は、真っ直ぐに地下に眠る怪獣めがけ突き進んでゆき、
そして命中し大爆発した。

異常振動を検知したPALが、恵を乗せファイターEXを緊急離陸させた、ちょうどその時、地表を
突き破り、黄色い血ヘドを吐きながら、片目となった四つ足怪獣ティグリスが現れた!犬に似た頭部
には二本の角がある筈だが、片方が失われている。爆発の衝撃で、硬い鎧のような皮膚で覆われた体は、
全身に傷を負ったひどい姿をしている。
監視していたエリアルベースは、恐れていた事態が現実となり、緊張感が走る。
「住民の避難状況は!」コマンダーが厳しい口調で聞く。
「報告では70%と・・・」敦子の表情が曇る。
「なんとか怪獣を食い止めろ!」こめかみを押さえながら叫ぶ千葉参謀。
「ライトニングは!?」コマンダーは冷静に状況を確認するが、
「間に合いません!」ジョジーの報告になす術が無い。
柊は呆然として一人呟く。
「馬鹿な・・・、地底貫通弾が効かないなんて・・・。」
エスプレンダーを見つめる我夢が苦悩して言う。
「どうして、こうなってしまったんだ。
 それでも、僕には出来ることがあるっていうのか・・・、ガイアーーー!」
怪獣を街へ向かわせない為、到着したライトニングは、傷だらけのティグリスに攻撃を加える。
しかし、ティグリスの片目が見据える先は、街ではなく、管制塔だった。まるで、ティグリスと柊が
睨み合っているかのようだ。
「人間は、ただオマエ達に、脅えるだけではない。」
柊は、ティグリスに対し、ミサイルを連射させ蜂の巣にする。叫びをあげながらも、ティグリスは
管制塔めがけ、一歩一歩近づいて来る。
「お前には、聞こえないのか!あの“大地の叫び”が!」
ふらつきながら藤宮が言った言葉に、一瞬、目を伏せた柊だが、再び厳しい目をして言った。
「奴は・・・怪獣だ・・・。」
何も出来ずにティグリスを見つめ祈るEXの恵、そしてガイア。
無数のミサイル攻撃を体に受け、血反吐を吐きながら満身創痍のティグリスは、管制室の柊を目前
にして、絶命し倒れた。

後味の悪い戦いに、エリアルベースのスタッフも沈黙したままだ。
外に出て、横たわるティグリスを前に何も出来ず、ただ見つめる藤宮は、苦痛に歪んだ表情で言った。
「ガイア、怪獣を地底に戻してやれ。」
管制室では、葛藤しているのか拳を握り締め、必死に己に言い聞かせるかのように、柊が言う。
「怪獣は、滅ぼさなくてはならない・・・、人類の為に・・・」

湖畔に立つ我夢と恵。
「僕は、何も出来ませんでした・・・」
「チャンスは、まだあります、きっと。
 大地に住むもの達と共に、生きてゆける方法は必ずある筈です。
 私達は、まだ諦めてはいけない。」
夕焼けに染まる湖を見つめながら、恵は静かに語った。

次回予告

悲しみの沼

土沼に近づく者に起こる怪事件。妖怪が住むという沼に隠された秘密とは?
老人『やめろ、やめるんだ!』


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